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音盤紹介:グールドによるバッハ/「パルティータ」LP実験編

公開日: : 音楽のこと

大昔、J.S.バッハの鍵盤音楽と言えば、
グレン・グールド!
という時代がありました。
今でこそ、アンジェラ・ヒューイットやアンドラーシュ・シフ、
その他、ピアノ、チェンバロの演奏とも数多くの演奏者が輩出し、
遡って古い録音や、
グールドの時代、
その陰に隠れてしまっていた演奏録音も復活し、
百花繚乱の観があります。
というより、逆にバッハの鍵盤音楽は少し下火かな...
と感じないでもありませんが。

グールドは演奏会からその活動の主舞台を録音に移し、
コンサートでは聞けなくなってしまったピアニストです。
それでも、
バッハだけではなく、
バロックから20世紀の音楽まで、
レパートリーも広かったし、
演奏も刺激的だったため、
その演奏録音は売れ続けたと思います。
ベートーヴェンの交響曲や、
ワーグナーの管弦楽のピアノ編曲版の録音なんて、
グールドで初めて知った、というものもありました。

ただ、ここで問題。
CBS、CBS/SONYから発売されていた、
グールドの録音のLPやCDの音が良かったのか悪かったのか?
という問題です。
実は、店長はレコード時代から、
グールドの録音されたピアノの音はあまり好きではありませんでした。
普通に聞くと、
低域の薄い、
ピラミッド型というより逆ピラミッドか寸胴型の帯域の音で、
同じ楽曲でも、
他のピアニストの深い音色のするピアノの録音に惹かれた、
ということが多々ありました。

でも、バッハ/パルティータの全集は、
グールドのものが大好きで、
LP、CDを何回も買い直しました。
ただ残念ながら、
演奏は非常に好きなのに、
その音に満足したことはありませんでした。

そこで、
最近、
中古盤屋さんで「パルティータ」のドイツプレスのLPを発見、
さっそく、いろいろ実験しながら聞いてみました。
RIAAカーブでは以前持っていたイメージそのままの音ですが、
Columbiaカーブで聞くと...、
あな不思議やな...というくらいにピアノの音に深みが出ました。
この音は大変気に入り、
2枚のLPを繰り返し聞きました。
同じデザインの「フランス組曲」も発見、
迷わず入手しました。

ところが、ここでもう一つ問題(^^;。
イコライザーカーブが合うと、
グールドの鼻歌というか、唸り声が、
より増幅して聞こえてくるのです。
もう「うるさい!」というほど(^^;;;;。
グールドの唸り声は昔から有名でしたが、
ここまでうるさいとは...。

思い出したのは、
昔、LPをマトリックス結線の4チャンネルにして聞いていたとき、
2チャンネルLPの再生でも、
グールドの唸り声が、
背後、もしくは左右のピアノからはずれた位置で、
けっこう大きな声で聞こえてきたことです。
CBSの録音スタッフは、
グールドの唸り声を、
通常の音場から逃がしたかったと、
苦労していたことが分かります。
できるだけ、
逆相でグールドの唸り声を逃がそうとしていたのではないか?
と感じることもあります。
レコーディングエンジニア、
マスタリングエンジニアの苦労がしのばれます(^^)。
ピアノに近接したところにマイクをセッティングしても、
グールドの唸り声はけっこう大きかったため、
消去したり、
目立たなくすることはできなかったようです。

LPでの再生には、
なるほど、
と満足できる方法が見つかりましたが、
CDではどうなんだろう?
と、実験してみました。
パソコンに音を取り込み、
RIAAカーブを反転させて当て、
さらにColumbiaカーブを当てる方法です。
「パルティータ」のCDが見つからず(整理せえよ)、
デジタル録音の方の「ゴルトベルク変奏曲」で試してみたのですが、
低域が恐ろしく充実した代わりに、
地獄の底から湧いてくるようなグールドの唸り声に、
少しアレレ...でした。
RIAAの反転が他のカーブだったのか?
これはもう少しいろいろ試してみる必要がありますが、
CDをパソコンで音を加工する方法を、
少しわかったようなところがあります。
これで、LPをあれこれ買い直さなくても済むのかな...?

CDをパソコンで取り込んで、
まだ端緒ながらあれこれ試していて、
最もうまくいったのは、
トスカニーニのRCA盤でした。
これは古いRCAのカーブを当ててみました。
おっかない雷親父の音楽が、
少し柔和なおじさんの音楽に変化します。
それでも演奏はさすがに凄く、
「20世紀最大の指揮者」の面目躍如たる音楽が聞けます。
まだそれほど実験したわけではありませんが、
レスピーギ/ローマ三部作、ガーシュウィン、グローフェなどでは、
非常な好結果が得られました。

いろいろ、やってみるもんです。

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