訃報:デヴィッド・ボウイ
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音楽のこと
ピエール・ブーレーズの訃報に接したと思ったら、
新年早々、デヴィッド・ボウイが亡くなった、という訃報が入ってしまいました。
店長のヒーローだった人が次々と亡くなってゆくのは、
時代とはいえ、寂しいですね。
日本でのデヴィッド・ボウイのヒット曲は1973年の「ジーン・ジニー」からですから、
今までの期間を考えると、非常に息の長いスターでした。
「ジーン・ジニー」はアルバム「アラジン・セイン」に収録されている楽曲でしたが、
その前の「屈折する星屑の上昇と下降、そして火星から来た蜘蛛の群」
(ジギー・スターダスト)が遡って売れたということがありました。
「ジーン・ジニー」の頃、
グラム・ロックと呼ばれる、
派手なメイクにギンギラ衣装をまとって、
ブギーのリズムをかっこよく演奏し、
ウッドストックの質実剛健な世界から、
より妖しい世界へと誘ってくれました。
先行してスターになっていたロキシー・ミュージックや、
マーク・ボランのTレックス(最初はティラノサウルス・レックス)も、
「グラム・ロック」と呼ばれていましたっけ。
店長はその昔、アングラ劇団の音楽を担当したことがありますが、
主題曲は「ジーン・ジニー」をなぞったものでした。
ただ、デヴィッド・ボウイはその世界に安住することなく、
文明批評的なアルバムを次々とリリース、
単なるロックスターという範疇を越えていました。
しばらく、
店長はドイツやイギリスのプログレッシヴ・ロックや、
アメリカやイギリスの新しい現代音楽の潮流に飲み込まれましたので、
デヴィッド・ボウイを聞かない期間がありましたが、
店長がデヴィッド・ボウイを見直すきっかけになったのは、
“HEROES”というLPのB面でした。
1977年のリリースで、リリース直後に聞きました。
ロック喫茶というかスナックに行って飲んでいると、
ロックとは呼べない、現代音楽に近いような恐ろしく暗い音楽がかかっていて、
「こりゃ、何じゃ?」と聞いてみたところ、
デヴィッド・ボウイの”HEROES”だというではありませんか!
これには驚きました。
演奏者のクレジットにブライアン・イーノとロバート・フィリップの名前があり、
さらに驚いたのでした。
ブライアン・イーノは元ロキシー・ミュージックのメンバーでしたが、
バンドを脱退、ソロで数多くの実験的なアルバムをリリースしたり、
プロデュースしていました。
ロバート・フィリップはキング・クリムゾンのリーダーでギタリストですが、
その頃、フィリッパトロニクスという、
ギターの音を遅延装置にかけた実験的なアルバムをソロや、
イーノと共作していました。
ロック喫茶ではその後、
同じデヴィッド・ボウイの”LOW”というアルバムに収録されている、
「ワルシャワ」を含むB面をかけてくれました。
それにも驚きたまげた店長は、すぐにレコード屋に走り、
手に入る限り、デヴィッド・ボウイのLPを買い漁ったのでした。
そして、1978年12月12日の東京NHKホールでのコンサートが音がよさそうだ、
ということで生デヴィッド・ボウイに接しました。
生で見たデヴィッド・ボウイは健康優良児みたいで、
なんだか体操選手のように見えたことが懐かしいです。
デヴィッド・ボウイは、
1981年にクィーンと”Under Pressure”という社会性の高いシングルを、
なんと45回転30cmLPでリリース、
ミュージックビデオの映像も刺激的でしたが、
45回転30cmLPの凄い音にはぶっ飛びましました。
以後もデヴィッド・ボウイのLPを買い続けましたが、
大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」に出演した辺りから、
デヴィッド・ボウイは役者業でもその異才振りを発揮しはじめ、
その頃から店長はデヴィッド・ボウイの音楽から少し離れたのでした。
でも、デヴィッド・ボウイは、
意識のどこかで店長のヒーローのようなところがあり、
気になる存在であり続けました。
亡くなる直前に「ブラックスター」というアルバムをリリースしたそうですが、
これは気になります。
聞いてみたいな...。
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